6月23日

熟慮離婚   (カノコ)


厚生労働省が、2000年の「人口動態統計」を発表した。2000年 に生まれた赤ちゃんは何人、というあれである。
様々な「人口動態」が発表されるが、その中に「離婚件数」というのもある。
26万4255組、前年より1万3726組増加。この数は年々増加しているという。
中でも注目されたのは、長年一緒に暮らしてきた夫婦の離婚の増加である。
20年以上同居していた夫婦の離婚数は、前年より2.1%増の4万1825組。
35年以上同居していた夫婦の離婚はその中の3882組。数こそ少ないが、前年比11.3 %増。

あなたは、この数字を見て、何を思われるだろうか。
25歳で結婚したとして、45歳。子どももかなり大きくなって、それなりのめどがつく。子どもが大きくなるまで、と抑えていた気持ちが「バクハツ」した・・・のか。
35年以上、となると60歳。いわゆる「定年離婚」か。

夫から言い出した離婚なのか、妻からの申し出なのか、統計表は何も語らな い。
が、裁判や調停に持ち込まれる例から推測すると、妻からの離婚請求が多いらしい。
特別思い当たることもないのに、長年連れ添った妻から言い出される離婚。
「春秋」(日本経済新聞)コラム氏は、いわゆる「熟年離婚」の増加を「気掛かりだ」と書いている。
「言い換えれば『熟慮離婚』の増加。」とある。
はずみで結婚してしまったけど、しまった、という若年離婚ではない。長年一緒に生活し、子を生み育てた配偶者と、一緒に「老後」を過ごすつもりはない、というのが 「熟年離婚」である。
どう考えても、「余生」をこの人とはイヤだ、と「熟慮」の結果の離婚。
「危機感」を抱くセンスのある、コラム氏は、大丈夫かもしれない。
が、たいていの夫は、妻が「熟慮」していることに気がついていない。

「振り向けば、君がいて」
と、信じて、定年後の旅行を夢見たりしている。
妻がどう思っているかを、たずねたことはあるのだろうか。
自分が、旅行に行く、といったら、妻も喜んでくると思っている。
そういった食い違いの、20年、そして35年。

もっとも専業主婦にとって、熟年離婚は、生活するのにはあまりに不利なこと が多い。
45歳を過ぎた「専業主婦」が食べていけるだけの「職」にありつける可能性はきわめて低い。
また、夫と離婚したとたん、彼女のもらえる年金は、「基礎年金」のみになってしまう。
なぜなら、今の年金制度が「世帯」を中心として組み立てられているからである。
年金のことを考えると、離婚に踏み切れない、という妻も結構いる。

先日発表された小泉内閣の「骨太の改革」には、年金等の社会保障を、「世 帯」から「個人」へ、という項目がある。
これが実現されたら、「熟年離婚」が急増するから、絶対に実現させては行けない・ ・・と主張する男性がいる、とか。

 

 

 

 

 

6月25日

女性言葉   (カナコ)


妻からの離婚請求が増えたという、ちょっと嬉しい報告。
この「嬉しい!」は、別れる・別れないの問題ではなく、女性から「NO」という意思表示ができる時代になってきたのだという感慨。
今まで多くの女性は、色々な場面ではっきり「NO!」という言葉を使えなかった・・・・・というより、使ってはいけないと思い込んできたから。
「女性が使ってはいけない言葉」は、「NO」に限らず結構多い。と同時に、「女性が使わねばならない言葉」の強制も少なくない。

例えば、「現代の若者にモノ申したい」という話題でしばしば出てくるのが「近 頃の女子高生たちの言葉はひどいものだ」という嘆き。
「男子を呼び捨てにする」「敬語を知らない」「男言葉を使う」などなど。
女子高生を擁護するわけではないけれど、敬称をつけろと言うなら、男子が女子を呼ぶ時も同様につけるべき。敬語を知らないというなら、これも男子とて同じこと。
そして何より、男言葉と女言葉の存在に疑問が残る。

10月からDV法は実施されるけれど、いわゆる「女性言葉」は、この“男性の暴力”を許容してはいないだろうか。
誰かに殴られそうになった時、男性ならまず「やめろ!」と、はっきりした命令形で一喝する。しかしこんな場合の女性言葉は「やめて〜。やめて下さい〜」の“お願い形“。
これでは、抵抗しようという積極的なエネルギーは沸いてこない。ただひたすらに防御のみ。
その結果は、サスペンスドラマの世界でなくても想像はつく。

荒っぽい言葉がいいのではない。しかし、「女性言葉」の成り立ちそのものが、 もしかしたら、女性の生き方に制約を加えることになって来たのかも…。

 

 

 

 

6月30日

未婚率   (カノコ)

 

昨年実施された国勢調査の抽出速報集計が発表された。
65歳以上の人口が、15歳未満の人口を1920年の調査開始以来初めて上回ったそうだ。
生産年齢(15歳〜64歳)人口は、初めて減少。前回比117万人減とか。今までのシステムでは、もうどうにもやっていけない、ということが、はっきりと数字で示されている。

今までのシステム、といえば、「結婚」というのもそうかもしれない。
「大人になったら、結婚して、子どもを生む」ことは、当たり前のこと。
と、何となく思ってきた。「結婚して、一人前」なんて言葉だってあった。
しかし、この調査結果を見ると、「結婚」から遠ざかる人が多くなってきている。
25歳〜29歳の男性の未婚率、69.5%。女性は54.0%(5年前はそれぞれ66.9%と48.0%)

25歳は「クリスマスケーキ」。26(日)歳になったら「商品価値が下落する」 (!!)なんて言葉を聞いて育って世代からしてみると、20代後半の女性で結婚していない人が半分を超えている現状は、隔世の感がある。
「結婚はしたいけれど、いい人がいない」という彼女たちは言い、「結婚」を焦らない。
「でも、いつまでも一人も寂しいわよ。老後のことを考えなさいよ」と、「親切」な忠告をする人もいるだろう。
しかし、調査の数字はこう言う。
65歳以上の女性の5.6人に1人は「単独世帯」(=一人暮らし)。9割以上の既婚率を誇る世代である。
長寿の女性は、どのみち「一人」になる可能性が高いのだ。結婚したからといって、一人にならないわけではない。

未婚率は、各世代共通に上昇している。が、女性の未婚率は、それでも40歳を越えると1割に満たない。
注目は、男性の未婚率の上昇である。
30〜34歳、42.9%(前回調査時は37.3%・・・以下同じ)
35〜39歳、25.7%(22.6%)
40〜44歳、18.4%(16.4%)
45〜49歳、14.5%(11.2%)
50〜54歳、10.0%(6.7%)
この数字は、あくまで「未婚率」。一度も結婚をしていない人の数である(死別・離別は含まない)。
国勢調査は5年ごとなので、それぞれ年齢階層が、一層ずつ上昇していることになる。つまり、未婚の40代後半の多数の人が、そのまま50代を迎えているのである。ということは、次の調査の時は、50代の未婚率は、10数%になる可能性がある、ということである。

「中高年男性」には「妻」がいるものだ、という「常識」が、現実問題として、 「常識」ではなくなり始めているのではないか。
「家事」「介護」を担ってくれる「妻」がいるという前提の元で作り上げられた労働体系や賃金体系、また社会体系は未婚の50代男性が1割を超えているという現実を、見ていない。10人集まれば、1人、というのは大きな数字である。これに離別・死別を加えると、同窓会で集まった男性の9人に1人は「ひとりもの」だ、ということだ。
老親の介護を託す「妻」も、手助けしてくれる「子」もない「核家族」である。

「家庭」というのは、夫と専業主婦の妻と子ども2人、という前提で作られた 「システム」の、抜本的な見直しが必要なときが、確実に到来している。

 

 

 

 

7月3日

ストライキ   (カナコ)

 

25歳までに結婚しないと“いき遅れ”だという「クリスマスケーキ説」は、 初婚年齢の上昇で、「晦日(みそか)蕎麦説」となったとも聞く。 29まではいいが、30になると、商品価値がなくなるという意味は同じ。
しかし最近、「正月の餅説」という話も聞いた。30歳過ぎて、1・2・3までは何とかいけるが、松の内過ぎたら(37が限度?)ひび割れるということか。

ほっといてくれい!と思う。何で女にばかりに旬?
多くの未婚女性は、結構優雅に暮らしている。海外旅行で出会うのも、そのほとんどが女性。
一方、未婚男性たちは、どんな毎日を過ごしているのだろうか。居酒屋くらいでしか出会わないのは、私だけなのか。

近所に、“70代の夫婦に48歳”の息子という核家族がある。親と子どもだ けだから、れっきとした核家族。
ここのお母さんに、よく頼まれる。「アナタのところには、若い女性がたくさん出入りしていらっしゃるので、いい方があったら、紹介して下さいね。親が元気なうちに、あの子(もうすぐ50だよ!)に結婚させてやりませんとねエ。」
彼女は、田んぼと畑と家さえあれば、パラサイトのまま自立していない息子のところへも、嫁は必ず来ると信じて疑わない。

まさかのリストラや昇給ストップの企業が増えて、共稼ぎが必然的になってきた昨今、仕事と家事と育児を一手に担う妻には辛い日々。
しかし共稼ぎ夫婦の場合、夫の方にも、少なからず不満がたまるのだという。
「結婚したのに、何で靴が磨いてないんだ」
「結婚したのに、何で店屋物ばかりなんだ」
「結婚したのに、何でやさしい妻がそばにいてくれないんだ」

“家事は妻の仕事”と考えている夫の不満度は、“家事は対等”と考えている 夫の不満度よりずっと高いという調査がある。
ということは、夫が自分身の価値観を、「家事って、妻だけの仕事じゃないんだ」 という方向に、ほんの少し変えるだけで、明日からはとっても幸せな結婚生活が待っているってことなんだよなあ。
現在の未婚女性たちの“結婚ストライキ”は、 夫予備群たちに、「そろそろ価値観の切り替え時じゃない?」というメッセージ。