12月15日

DV防止法    (カナコ)


この12月になって初めて、「妻への行為をDVとみなし、6ヶ月間妻に近づくことを禁止する」という裁判所からの保護命令に従わなかった夫が逮捕された。10月に施行された『ドメスティック・バイオレンス防止法』の威力が発揮された画期的な出来事。
「妻を殴るのは日本の文化である」などと言い放つ元カナダ領事のいる国だから、こんな逮捕劇がなければ、DVは犯罪なのだという意識が広がらないのかもしれない。

日本では、結婚は個人の絆ではなく、相手を丸ごと所有するものという発想がある。 だから、夫婦間の絆が揺らいだときに、パートナーと正面から向き合って話し合うのではなく、そこに関わる第三者に矛先を向ける。「オレの女に手を出したな!」とか 「人の亭主を取るなんて泥棒猫よ!」という言葉がその象徴。
嫁と姑のいさかいも、夫と向き合うことがないままの代理戦争。

・・・と、言葉では分かっていても、今まで育つ過程で「父と母が対等に話す」というモデルを見たことがない夫婦にとって、夫と妻が向き合うということは簡単ではな い。
先日、この寒さの中を、30代初めの女性が子ども2人の手を引いて家を飛び出してきた。夫の殴る・蹴るに対して、自分だけなら我慢できるが、子どもが怯えて眠らなくなってしまったからという。
いま彼女は、一日も早く夫のもとに帰りたがっている。夫が手を上げる原因は、嫁である自分が夫の親戚に嫌われているからなので、誰かが親戚の出入りを止めてくれれば、ことは全て解決すると信じている。
暴力を振るう夫を正面から見ることもなく、ましてや、結婚の外での生き方もあるなんてことは考えもしない。

昨年「児童虐待に関する法律」ができ、今年「DV防止法」ができて、治外法権だった家庭が外に開かれてきた。この法律が生きて稼動するまでには、まだまだ時間がかかるだろうが、21世紀は「夫婦って何?」「結婚って何?」そして「家族って何 ?」と問い直される時。

 

 

 

 

 

12月21日

年賀状   (カノコ)


「年賀状は、なるべく12月25日までにお出しください!」という張り紙が、ポストにある。
あと○日、と指折り数えてあせる、そんな時期である。
出すのはちょっと面倒だが、もらうとうれしい、そんな自分の気持ちが面はゆい。

退職してはじめてのお正月のあと、「少ない」という一言を残して自殺した 「父」の話を読んだことがある。
昨年までは、高く積み上げられていた賀状が、ゴム輪で軽く束ねられるようになったことがショックだったのかもしれない、と娘にあたるひとが書いていた。
大企業の高い地位にいた彼には、その「役職」への賀状が、山ほど届いていたのだ。
しかし、「役職」がなくなったとたん、その賀状は、その「役職」に着いた次の人へ送られるものに自動的に変更される。
そんな当たり前のことを忘れるほどの、長い長い「宮仕え」だったのだろう。

勤め続けるのがふつうの男性に比べて、「出産」「育児」等で勤めをやめ、「家庭」にはいることの多かった女性が手にする賀状は、きわめて個人的なものが多い。
成長の過程で、出会った人とのやりとりが多い。「義理」がらみのものは少ないから、急にばたっと減ることはない。
しかし、こちらが出さなければ、次の年は来なくなる・・・・という繰り返しで、子 育ての忙しい時期、バタバタと暮らしていると数枚ずつ減っていく。
それが、すこしずつ増えていくとすれば、新しい関係が作れた、ということ。

自分の名前で出す年賀状は、何枚ですか?
「おめでとうメール」は何通ですか?
それは、今年のものより増えましたか?減りましたか?

新しい名前を、住所録に登録しながら、その人と出会ったときのことを思い出す。
今は、そういう季節。

 

 

 

 

 

12月25日

人生が好き    (カナコ)


このところ野暮用が続いて、今夜は久々にゆっくりできた夜。 奄美大島の友が送ってくれた黒糖焼酎のお湯割を片手に、BSでクリスマスキャロルを楽しんだ。イブの夢で自分の未来を覗いた強欲な金貸しが、翌日から人生をやりなおそうとする物語。
クリスマスの朝、突然子どもたちにプレゼントを買い始めた彼をいぶかしんで、おもちゃ屋の店主が「何か、あったのか」と尋ねる。その時の彼の返事。「単純なことさ。人生が好きになったんだ」

日本人の節目はお正月。毎年の初詣に「今年こそは、いい年でありますように」と手を合わせる友人がいる。彼は、除夜の鐘を聴いていると、1年間の辛い悲しい出来事が走馬灯のように浮かんでくると言う。「オレの人生、なんでこんなに艱難辛苦ばかりなのか」

人生いろいろ。
最近とみにナマケモノになった私は、艱難辛苦を思い出すのはできるだけパスして、 まず黒糖焼酎をかたむけるほんのひとときを喜びたい。
こんなひとときを持てる人生が好き・・・
だから子どもたちにも伝えたいと思う。「あなたが生まれてきた。そして今、生きている。これって、それだけで本当にすごいことなんだよ」と。